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労働分生産性を正しく理解する│飲食店の労働生産性とは?

DX推進

マネジャーになってこれまで触れたことのない指標や用語に頭を抱えている新任マネジャーも多いことと思います。ここでは経産省の統計資料で使われている用語解説などを参考にしながら難解な労働生産性という飲食店の運営やマネジメント上重要な指標の理解を深めていきたいと思います。

労働生産性とは?

経済産業省では、我が国企業の経営戦略や産業構造の変化の実態を明らかにし、行政施策の基礎資料を得るため、「経済産業省企業活動基本調査」を実施しています。その中で調査項目として使われる指標に「労働生産性」があります。経産省の解説によると、

(注) 労働生産性とは、生産性分析の一指標であり、従業員一人当たりの付加価値額を示す指標。ここでは、以下の算出による。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 常時従業者数

参照元:経済産業省統計資料 https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210331011/20210331011.html

とあります。

計算式を解釈すると「従業員一人あたりが企業活動によって生み出す付加価値額」となりますが、いう「付加価値」とは何を指すかですが、「付加価値」とは、会社が新たに生み出した価値のことと定義しながらもそれは業種によって様々捉え方があるようです。付加価値について同様に経産省の解説では

(注) 付加価値額 = 営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課

とあります。

益々難解になってきました。。。

更に付加価値の算出方法にはいくつか方法があるらしく。

  • 控除法:付加価値 = 売上高 – 外部購入価額
  • 加算法:付加価値 = 人件費 + 賃貸料 + 税金 + 他人資本利子 +当期純利益

とあるようです。一般的には中小企業など中心に控除法がよく用いられており、中小企業庁方式とも呼ばれる計算方法と言われています。

更に外部購入価額には厳密には仕入れた材料やら何やら含まれていますが、わかりやすくざっくり算出するには粗利(売上総利益)ベースで算出することも多いようです。つまり、厳密ではなく、わかりやすくざっくり労働生産性を企業経営指標で表現すると、「従業員一人あたりが企業活動によって生み出す粗利額(売上総利益額)」と言い換えることができると考えられます。※厳密にて加算乗算が更に必要に思われますが、新任マネジャーにとってはパッと「あ、そういうことね」でとどめておくことが良いように思われます。

中小企業と大企業の労働生産性の違い

労働分配率はその企業がどれだけ少ない投資でどれだけの付加価値を産み出しているかという指標としても見られますが、企業規模や資本力によっても大きな違いが出ることが多い指標といえます。なぜならば資本力のある大企業では数年に一度大規模な設備投資なども実施可能なことからIT化やシステム化、最近ではDXと言われる分野にも積極的な投資をしやすい環境にあるといえます。よってその投資によって少ない従業員数で一定規模の売上や利益を生み出すことが中小企業に比べて比較的容易な環境にあるのです。更に言えば、大企業では規模の原理が働き、例えば取引相手が大企業であったり、大規模なチェーン店舗を保有する本部やホールディングスとの取引も増えることが想定されます。つまりてこの原理がはたらきやすく、1営業マン、1社員が担当する企業数(店舗数)も数字上は膨大であっても本部担当●名、HD担当●名、更にチェーンの地域店舗担当は別グループ会社(販社等)が担当することで本社担当は本部商談窓口数名のみで構成される状況も実態としてはあり、労働生産性はかなり効率が良く高く見えるということが起こりえます。よって一律で全規模全業種の企業平均と自社とを単純に比べてしまうと大きな乖離や経営判断の齟齬が生まれることがあったりします。

そこで経産省や中小企業庁では企業の規模別に大企業と中小企業とに分けて労働分配率や労働生産性を統計データとして発表しています。

2019年の経産省の調査によれば

全国の、37,528社を調査した結果(規模としては常時従業者数513人、売上高は246.1億円規模ということから中小企業~大企業の中間クラスのデータと理解)

それらの企業規模をサンプルとしたデータでは労働生産性(高:金額)としては

全業種平均で862万円(製造業、小売業、卸売業合計)

となります。しかも製造業、小売業、卸売業によって乖離があります。

製造業は1,101.4万円、卸売業は1,069.4万円、一方で小売業は496.4万円とその他2業種と2倍近い差があることが分かります。自身の業種がどの業種に該当するかは事前に見ておくことが重要でしょう。

しかしこれだけで見てしまうと業種別に結構な差があることから一概に700万円前後が平均かというとそうではないというのが実情です。業種によって少人数で付加価値を生みやすい業種、そうでない業種でその分配率は大きくかわります。

ここではもう少しブレークダウンして業種別、特に人的リソースが大きな構成比を占める飲食店ではどういった数値になっているかを見てみたいと思います。

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/2019kakuho/pdf/2019_allgaikyou.pdf

経済産業省「2019年企業活動基本調査確報-平成30年度実績-」参照

飲食業における労働生産性

先程の経産省の調査内容を業種別に見てみたいと思います。

ここでは「飲食サービス業」という業種分類で数値を追ってみたいと思います。

※「飲食料品小売業」という分類も同じデータに記載がありますが、飲食料品小売業の大半は百貨店やスーパーなどの食料品売場を持つ店舗のことを差すと言われており、一般的なその場で調理をして消費者に提供する「飲食店」とは少し解釈が違うという理解で飲食サービス業の数値を参考にしています。

こちらの経産省の調査データの元となる「飲食サービス業」の分類では対象企業数612社、40,881事業所数、平均の従業員数は1,620名/社あたり、売上規模は88億円/社といったデータサンプルでの数値結果となります。

付表7  産業別、一企業当たり付加価値額、付加価値率、労働分配率、労働生産性

を見ると

飲食サービス業の労働生産性は242.7万円

となり全産業別の中でも最も低い数値となっています。ちなみに次は「個人教授所」といったこれまた職人且つ属人性の高い業種、つまりドライバーや教官といった職種は機械化しづらい業種が生産性の低い上位に来ていることが分かります。

一方で「鉱業、採石業、砂利採取業」は4961.8万円と最も労働分配率の低い業種となっているようです。電気、ガス、石炭、石油業も3500万円~3800万円となっており、大企業が担うインフラやエネルギー領域の分野は一人あたりの生産性が高い傾向が見て取れます。

このように高い業種と低い業種で約5000万円近い圧倒的な差があることから、一概に全業種平均ではなかなか図りづらいものがある指標であるといえます。

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/2019kakuho.html

2019年企業活動基本調査確報-平成30年度実績-

付表1  産業別、企業数、事業所数、常時従業者数、売上高

付表7  産業別、一企業当たり付加価値額、付加価値率、労働分配率、労働生産性

参照

まとめ

飲食業は他業種に比べ労働生産性が低い、つまり裏を返すと人的リソースの投下によって高い付加価値を産みやすい業種である一方で生産性が低く人的投資がしづらい≒人件費をあげづらい業界でもあると言えるかもしれません。外食産業の年間平均給与が他業種に比べ低く設定されている傾向があるというのは生産性が低いことと比例していると思われ、一方で生産性を高めることができれば年間給与つまり人件費に投資できる金額もその分引き上げることができるといえるでしょう。

そうはいっても一概に従業員数を削減し総人件費をただ単純に減らして付加価値や生産性を高めるという考えはマネジメント初心者としては陥りやすいポイントです。

飲食店では従業員の接客品質や徹底したQSCが集客にわかりやすいほどに影響し、強いてはその店の売上を左右すると言っても過言ではないとも言えます。

ポイントは従業員の減らし方です。不必要な領域の見極め、過剰サービス領域へのメス、それは顧客が求めているものなのかの精査、そして最も目を入れるべきは「人でなくても良い領域、人でなくてはならない領域の見極めとその実行」です。

「鉱業、採石業、砂利採取業」や「電気・ガス・石油」業などは最初から労働生産性は高かったのでしょうか。

それらの業種も最初は飲食業と同様に大半が人的リソースで成り立っていたものと思います。それが産業革命や機械化、ロボット化、IT革命、強いてはDXと時代によって進化を遂げてきたことで生産性は飛躍的に改善してきた歴史があるのではないでしょうか。石炭、鉱石などは当初は危険やリスクが労働者に伴う業種であり、半ば強制的に人的リソースを投下する領域を減らしていき機械化、省力化を加速する必要があった結果、生産性が向上し労働分配率が下がっていったのではないかとは推察されます。

飲食業で働く労働者に同様の危険やリスクが伴うとは言いづらいですが、経営視点から見て重要なのは業種平均が●●%だから自社は一般的だ、という見方ではなく、労働分配率が低くてもしっかりと利益や付加価値を産み出している業種は何をどう改善し、それは飲食業にも採り入れることはできないだろうか、というフラットな視点を持って経営改善や店舗内のオペレーション改善、DX推進に取り組むべきであると考えています。

そうすることで生み出された従業員の時間を何に投下するか。そこが重要であり、経営者やマネジメント層の価値やセンスが分かれるところであると思います。

敷いて言えば、機械化できる領域を見極め、人的リソースをその分投下すべき領域に積極的に投資を行い、サービスレベルとQSCを担保向上し集客、リピーターを増やしていく。究極の高生産性を生み出すリピーター獲得によって高い収益率を上げ、従業員数はそこまで減らさずに生産性を向上させていく。そういった取り組みで改善を図ってきた飲食企業も数多くあるのも事実です。

ぜひ各企業IRから売上総利益率、売上高総販管費(人件費)率、営業利益率などといった少し目立たないですが重要な指標となっている部分にも着目し、それらで数値を改善している企業が直近数年でどういった取り組みをしてきているかに着目してみると新しい発見があるかもしれません。

ライタープロフィール

生産性高めさん(ペンネーム)

大学卒業後、メーカーでGMSを中心とした大手量販本部法人営業経験後、マーケティングコンサルファームにて多岐に渡る業種を支援。新興国における海外法人経営、国内事業統括を経て同社の上場を機に異業種へ転身。労働集約型のコンサルファームで培った限りない生産性への追求は現代のスマート経営におけるヒントとなる部分も多く、本業の事業戦略業務の傍ら週末はBPO企業の依頼により各方面への講演の他、ライターとしても執筆活動を行うマルチサラリーマン。

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