外食大手企業の従業員・飲食店店長クラスの平均(モデル)年収はどれくらい?

DX推進

飲食店経営において適正な人件費率はどの程度か?マネジメント層においては永遠の課題であると思います。

外食産業は他産業に比べ人的な投資が経営に大きくインパクトする業種であると言われています。ここでいう「インパクト」の意味合いは実は深く、人件費への投資コストが高すぎると経営を圧迫し生産性や労働分配率に影響する一方で、低すぎても従業員へのモチベーション低下や離職率を招き、収益に直接影響する領域ともいえます。

今回は外食産業の主要プレイヤーが直近で公開しているIRデータや求人サイトの情報を参考に従業員の平均年収と飲食店の運営を現場で支える店長、エリアマネジャークラスのモデル年収を比較しながら直近の外食産業における報酬トレンドを大枠把握してみたいと思います。皆様の自社での経営や開業時店長を募集する際の参考になれば幸いです。

マクロデータ_国内企業の平均年収はどのくらい?

国税局統計から発行されている令和元年調査レポートによると、

全業種平均給与額は436万円(男性 540 万円、女性296万円:正規及び非正規込)

正規、非正規の平均給与額では、正規 503 万円、非正規 175 万円

となっています。

ただあくまでも平均値であり、大企業と中小企業、また産業別に見ても大きな差があります。

更に従業員規模別と産業別に見てみたいと思います。

従業員規模別と業種別平均年間給与額

従業員別(名)平均年間給与
100~499¥4,372,000
500~999¥4,789,000
1,000~4,999¥5,086,000
5,000~¥5,160,000
業種別平均年間給与
宿泊業・飲食サービス業¥2,600,000
卸売・小売業¥3,760,000
情報通信業¥5,990,000
サービス業¥3,590,000
※正規・非正規込

業種別は一部抜粋版。

国税局統計では以下源泉徴収義務者すべてを対象としている。

・民間の事業所及び官公庁等
・従業員(非正規を含む)、役員、国家公務員、地方公務員、公庫職員等(非正規を含む。)全従事員について源泉所得税の納税がない事業所の従事員
・労働した日又は時間によって給与の金額が算定され、かつ、労働した日にその都度給与の支給を受ける者

引用:国財局統計データ

令和元年調査データ_国税局統計
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf

こう見ていくと飲食サービス業は他業種に比べても平均給与は高くはないといえます。

ただ少し深堀りすると、飲食店の運営においてはアルバイトなどの非正規社員の存在は欠かせませんが、上記データには非正規社員も含まれていることからその比率が高い業種はどうしても平均を押し下げてしまうという点もあろうかと思います。

ではそれぞれの外食産業の主要プレイヤー各社の平均年収はどのくらいなのでしょうか。直近のIRから算出したリアルな数値を見てみたいと思います。

外食上場企業の平均年収ってどのくらい?

ランダムではありますが、20社ほど外食上場企業の平均年収を抜粋してみました。

非常にリアルです。

企業名従業員数(連結)平均年収
1株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES(3563)2,863¥8,122,000
2株式会社 トリドールホールディングス(3397)4,139¥7,330,000
3株式会社 吉野家ホールディングス(9861)4,043¥6,607,000
4株式会社 すかいらーくホールディングス(3197)6,161¥6,384,000
5日本KFCホールディングス 株式会社(9873)856¥6,309,000
6株式会社 松屋フーズホールディングス(9887)1,613¥6,305,000
7ロイヤルホールディングス 株式会社(8179)2,680¥6,190,000
8株式会社 ゼンショーホールディングス(7550)14,402¥6,189,000
9株式会社 クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)4,475¥6,100,000
10日本マクドナルドホールディングス 株式会社(2702)2,083¥6,030,000
11株式会社 コロワイド(7616)5,420¥6,000,000
12株式会社 サイゼリヤ(7581)4,164¥5,893,000
13株式会社 プレナス(9945)1,656¥5,584,000
14株式会社 王将フードサービス(9936)2,241¥5,345,000
15株式会社 JFLAホールディングス(3069)1,988¥5,267,000
16カネ美食品 株式会社(2669)1,232¥5,179,000
17株式会社 ドトール・日レスホールディングス(3087)2,755¥5,015,000
18ワタミ 株式会社(7522)2,642¥4,660,000
19カッパ・クリエイト 株式会社(7421)816¥4,583,000
20くら寿司 株式会社(2695)2,090¥4,547,000
※各社直近開示されているIRから算出(決算時期におより差異があります)

※Source:各社IR/WEB:調査日:2021年6月
年間平均給与には「賞与を含む」(法令上)
年間平均給与対象者は、従業員とされており役員は含まれない
従業員には、臨時従業員は含まず
従業員とは正社員(期間の定めのない労働契約(無期労働契約、正規雇用)の労働者)
臨時従業員とはいわゆる契約社員・パート社員・アルバイト社員等(有期労働契約(非正規雇用)の労働者)

あくまでも抜粋ですのでトップライン、ボトムラインにはまだまだ幅がありますが、ここにあげた企業だけでもトップとボトムで約360万円の年収差異があります。

一概に良し悪しは判断できませんが、これを見たマネジメント層や従業員がどう思うかという点は結構わかりやすいのかなと思ったりします。

株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES(3563)つまりスシローは好業績が人件費投資のせいなのか、DX投資なのかは図りづらいですが、明らかに異業種から見ても「これ(くらいの年収レンジ)ならやっていけそう」と思える平均年収であるといえます。実はそう見られているかという点は結構重要であると考えます。

なぜなら、昨今飲食業において、マーケティングや機械化、DXは競争に勝ち残っていくためには欠かせない領域です。料理の味やサービスだけで勝ち残れる時代ではないのです。

スシローの他にはトリドールなども異業種から多くの有能な人材を積極採用している企業となります。特にDXとマーケティング分野の即戦力人材採用にはかなり力を入れています。彼らは報酬体系ももちろんですがそういった人材人種が好む立地環境や社屋への設備投資なども含めかなり徹底した動きを見せていますね。

彼らに見られるように、そういった従来の飲食分野とは違う特殊領域に長けた即戦力を異業種から人を入れてでも適応していかなければならない社会環境であり、異業種の優秀なビジネスマンからどう見られているかという視点も採用領域では重要なポイントであると思われます。

ただ平均給与が低いから全て悪いかというわけでもありません。平均では低いがマネジメントレイヤー以上、つまりコア人材に限っては色をつけて投資をしている企業もあるはずです。

一般的には全体の20%が収益の80%を創出していると言われることもあり、特定のレイヤーに集中して投資をすることでその層のモチベーションを引き上げトップラインを短期的に伸ばす原動力としたり、他社への離反を防止したりという取り組みを重要視している企業もあります。そういった企業では役員以外の部長やマネジメント層にもストックオプション制度を設けているところなどもあります。

現場を支える店長のモデル年収はどれくらい?

しかし、外食産業を支えているのはどこまで言っても現場であるというのは間違いないと思います。

経営陣の年収をどれだけあげたとしても現場をマネジメントする店長クラスへの報酬を考慮することも事業継続のためには必須です。最も激務で離職率の高いレイヤーとも言われています。

ここでは、先程あげた外食上場企業の主要ブランドを一部抜粋して、各ブランドが求人サイトで開示している店長クラスの「モデル年収」を抽出したデータをまとめています。

各社が募集時に求人サイトで公開しているモデル年収であり、色はある程度つけられているのではないかと思われますが、参照元は一定の大手求人サイトですのでそこまで実態とずれてはいないとも思われます。

企業名ブランド名業態店長モデル年収
株式会社 ゼンショーホールディングス(7550)はま寿司回転寿司500万~720万円
株式会社 ゼンショーホールディングス(7550)ビッグボーイハンバーグ・ステーキ463万円~511万円
株式会社 ゼンショーホールディングス(7550)焼肉倶楽部いちばん焼肉513万円~
株式会社 すかいらーくホールディングス(3197)ガストファミレス425万円~815万円
日本マクドナルドホールディングス 株式会社(2702)マクドナルドファストフード659万円
株式会社 コロワイド(7616)牛角焼肉622万円
株式会社 コロワイド(7616)ステーキ宮ハンバーグ・ステーキ430万円
株式会社 コロワイド(7616)カルビ大将焼肉380万円
株式会社 吉野家ホールディングス(9861)吉野家牛丼440万円~518万円
株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES(3563)スシロー回転寿司646万円
株式会社 サイゼリヤ(7581)サイゼリアファミレス509万円
株式会社 トリドールホールディングス(3397)丸亀製麺ファストフード388万円~405万円
株式会社 プレナス(9945)ほっともっと持ち帰り弁当450万円~640万円
株式会社 プレナス(9945)プレナスMKファミレス549万円
ロイヤルホールディングス 株式会社(8179)ロイヤルホストファミレス444万円
株式会社 クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)かごの屋ファミレス550万円
株式会社 クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)磯丸水産居酒屋587万円
くら寿司 株式会社(2695)くら寿司回転寿司422万円
株式会社 ドトール・日レスホールディングス(3087)ドトールコーヒーカフェ450万円
株式会社 松屋フーズホールディングス(9887)松屋牛丼500万円~650万円
ワタミ 株式会社(7522)焼肉の和民焼肉475万円
株式会社 王将フードサービス(9936)餃子の王将餃子713万円
カネ美食品 株式会社(2669)寿司御殿回転寿司500万円
株式会社 JFLAホールディングス(3069)とりでん居酒屋480万円
日本KFCホールディングス 株式会社(9873)KFCファストフード450万円~550万円
カッパ・クリエイト 株式会社(7421)かっぱ寿司回転寿司445万円

年間平均給与には「賞与を含む」
年間平均給与対象者は、従業員とされており役員は含まれない
年間平均給与対象従業員には、臨時従業員は含まず
従業員とは正社員(期間の定めのない労働契約(無期労働契約、正規雇用)の労働者)
臨時従業員とはいわゆる契約社員・パート社員・アルバイト社員等(有期労働契約(非正規雇用)の労働者)

こう見るとやはり社員の平均年収が高い企業は総じて店長クラスの年収モデルも高いといえます。逆もしかりですね。各社の人件費に対する考え方や戦略もよくあらわれています。

まとめ

飲食業は他業種に比べ労働生産性が低い、つまり裏を返すと人的リソースの投下によって高い付加価値を産みやすい業種である一方で生産性が低く人的投資がしづらい≒人件費をあげづらい業界でもあると言えるかもしれません。外食産業の年間平均給与が他業種に比べ低く設定されている傾向があるというのは生産性が低いことと比例していると思われ、一方で生産性を高めることができれば年間給与つまり人件費に投資できる金額もその分引き上げることができるといえるでしょう。

人件費は低ければ低いほうが良いかといえば、そうではないと思います。無機質なロボットが提供するサービスのみであれば別に飲食店に行く必要もなく、自宅やコンビニで十分なのではないでしょうか。人と接する機会を作る、深め、接客品質をあげるために人に投資をすることで付加価値を産む領域でもあります。その投資を生み出すための生産性向上、業務改善やIT投資、DXであるべきであると捉えます。そこは人であるべきかというフラットな視点を持って経営改善や店舗内のオペレーション改善、DX推進に取り組んでいただきたいと思います。

どこを引き上げどこを伸ばす。それは企業によって考え方は様々ではありますが、成功している企業がどこを機械化し生産性をあげ、産み出した収益をどこに再投資するか。それは深堀りしてみる価値はあるものと思います。

ライタープロフィール

生産性高めさん(ペンネーム)

大学卒業後、メーカーでGMSを中心とした大手量販本部法人営業経験後、マーケティングコンサルファームにて多岐に渡る業種を支援。新興国における海外法人経営、国内事業統括を経て同社の上場を機に異業種へ転身。労働集約型のコンサルファームで培った限りない生産性への追求は現代のスマート経営におけるヒントとなる部分も多く、本業の事業戦略業務の傍ら週末はBPO企業の依頼により各方面への講演の他、ライターとしても執筆活動を行うマルチサラリーマン。

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