世の中には様々な職種がありますが、飲食店を含むサービス業は特に生産性が低いと言われている業種です。なぜ、こんなにも飲食店は生産性が低いと言われるのでしょうか?
政府機関が発行する統計データや様々な文献を見てみると、国内産業17業種の中で飲食店を含むサービス業は、就業者1人当たりの生産性は14位となっています。就業者1時間当たりで見た場合には、16位という結果です。この記事からも分かるように、飲食店の生産性は低いことが分かります。それはなぜでしょうか?
この記事では、飲食店の生産性が低いと言われている理由やマネジャーなど店を運営する側の視点で生産性向上の為にすべきことについて触れていきたいと思います。
生産、提供、消費の「同時性」が招く弊害
飲食店では、商品の生産、提供、消費の「同時性」(※)が特徴的な業種であり、それは他の職種ではあまり見られない事象です。
※「同時性」とは異なった2つ以上の形象を,並置または組合せることによって同時に1つの場所で表現すること。
飲食店では、どの工程もお店という同じ空間の中で同時に行われています。例えば、加湿器の生産者と消費者は同じ空間にいる必要はありません。同時性が起こり得る現場での仕事においては、それぞれの領域での稼働率が生産性に大きな影響を与えます。
つまり、飲食店の生産性を上げる為には、店内で働く従業員の各現場での稼働率を上げる必要があるのです。
ではどのようにすればその稼働率を上げていけば良いのでしょうか。
飲食店における最新技術とAIの導入(DX事例)
昨今コロナの影響もあり、非接触をキーワードに飲食店によっては自動調理機材や無人レジ、予約台帳、OES、キャッシュレスなどの領域で最新の技術を導入する企業が増えています。
そういった最新の技術やAI、DXは飲食店での生産性を向上させていく上では外すことのできない要素です。
例えば1912年に創業したとある老舗飲食チェーンでは、店の入り口付近に定置カメラを設置して商店街の通行状況や来客人数を記録しています。これは、画像解析カメラや来客予想AIシステムを駆使して通行量から来店数などを予測し、売上予測や材料の仕入、店内スタッフのシフト調整の最適化に役立てているそうです。加えて、それらのデータに天気予報などの情報を組み合わせると、来店数の的中率はなんと9割を超えてくるとか。こういった最新の技術やAIの導入に抵抗がある飲食店やこんな時期に新たな投資などできないよ。などと考える経営者はまだまだ多いのが実態ですが、実はそこが飲食業界が生産性を向上させられない足かせとなっています。最近ではコロナ関連の非対面化推進助成金やIT補助金、生産性向上施策に対する支援制度など行政からも様々な支援がリリースされています。この機会を使うなどして動き始めている経営者も多いのです。つまり、それらの先進的な企業と戦い生き残っていくためにはもはや人の経験や知識、根性だけで生産性を上げて行く事はもはや限界に来ていると言わざるを得ないのです。
スタッフの教育
飲食店で生産性を上げるには、出来る限り少ない人数でお店を回すことが大切だと言われています。省力化のためには、スタッフの無駄な作業をなくしたり、技術を高め効率を高めたり、仕込み作業を役割や順番、導線を細かく決めて行なったりと各パーツパーツでの細かい動きの見直しなどが必要になってきます。
先ずは、店内の全ての作業の棚卸しをしてみましょう。出勤、掃除、ご飯を炊く、銀行に行き入金、予約の確認などの作業が粗利に繋がるのかしっかり確認する必要があります。
そして、細かい作業である、伝票処理やきゃべつの千切り、などを行うのに時間を決めます。お店のスタッフ全員が決めた時間内に作業できるかを確認し、目標時間に出来ることを目指していきます。このようにすることによって、人数が少なくても、効率よくお店を回すことが出来ます。
そういったバックヤード業務だけではありません。フロアオペレーションの見直しもまだまだ改善の余地があります。
更にお客さまが来店してから席に着くまでのスタッフの動きや配置に無駄がないか、もう一度フラットにメスを入れて見て下さい。意外なところに盲点があるはずです。
まとめ
飲食店の生産性を向上させるには、最新技術やAIの導入、スタッフの配置や動きの最適化。そのフローや動きのマニュアル化と落とし込みなど教育の徹底をすることで同時性が存在する店内の各領域での稼働率がアップし、店全体の生産性向上に繋がります。
コロナの影響もあり、飲食店は大打撃を受けているところも多いですが、コロナに打ち勝つ為にも、飲食店経営者は、今こそ生産性を向上させるための施策への投資を積極的に図っていくべきに思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。