このグラフは産業別に見て国内でも生産性が低いと言われている外食産業の中でも錚々たる上場企業における直近5年間のある数値推移を比較した折れ線グラフである。
そのグラフで他社とは別次元の推移を見せている一番上に位置する企業がコロナ禍においても高成長を見せ続ける株式会社FOOD & LIFE COMPANIESつまりスシローである。
外食産業において年間平均給与が800万円超えがいかにすごいことなのか?
国税局統計から発行されている令和元年調査レポートによると、
あくまでも平均値であり、大企業と中小企業、また産業別に見ても大きな差があるものの、日本国内の全業種平均給与額は436万円(男性 540 万円、女性296万円:正規及び非正規込)
となっている。
更に従業員規模別と産業別では以下のとおりである。
従業員規模別と業種別平均年間給与額
従業員別(名) | 平均年間給与 |
100~499 | ¥4,372,000 |
500~999 | ¥4,789,000 |
1,000~4,999 | ¥5,086,000 |
5,000~ | ¥5,160,000 |
業種別 | 平均年間給与 |
宿泊業・飲食サービス業 | ¥2,600,000 |
卸売・小売業 | ¥3,760,000 |
情報通信業 | ¥5,990,000 |
サービス業 | ¥3,590,000 |
※正規・非正規込 |
業種別は一部抜粋版。
国税局統計では以下源泉徴収義務者すべてを対象としている。
・民間の事業所及び官公庁等
・従業員(非正規を含む)、役員、国家公務員、地方公務員、公庫職員等(非正規を含む。)全従事員について源泉所得税の納税がない事業所の従事員
・労働した日又は時間によって給与の金額が算定され、かつ、労働した日にその都度給与の支給を受ける者
引用:国財局統計データ
令和元年調査データ_国税局統計
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
こう見ていくと飲食サービス業は他業種に比べても平均給与は高くはない(なかなか給与レベルを引き上げることが難しい業界)といえる。
ではそれぞれの外食産業の主要プレイヤー各社の平均年収はどのくらいなのか。
直近のIRから算出したリアルな数値を見てみたい。
外食上場企業の平均年収ってどのくらい?
ランダムではあるが上記グラフにあげた20社ほど外食上場企業の平均年収を抜粋してみた。
企業名 | 従業員数(連結) | 平均年収 | |
1 | 株式会社 FOOD & LIFE COMPANIES(3563) | 2,863 | ¥8,122,000 |
2 | 株式会社 トリドールホールディングス(3397) | 4,139 | ¥7,330,000 |
3 | 株式会社 吉野家ホールディングス(9861) | 4,043 | ¥6,607,000 |
4 | 株式会社 すかいらーくホールディングス(3197) | 6,161 | ¥6,384,000 |
5 | 日本KFCホールディングス 株式会社(9873) | 856 | ¥6,309,000 |
6 | 株式会社 松屋フーズホールディングス(9887) | 1,613 | ¥6,305,000 |
7 | ロイヤルホールディングス 株式会社(8179) | 2,680 | ¥6,190,000 |
8 | 株式会社 ゼンショーホールディングス(7550) | 14,402 | ¥6,189,000 |
9 | 株式会社 クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) | 4,475 | ¥6,100,000 |
10 | 日本マクドナルドホールディングス 株式会社(2702) | 2,083 | ¥6,030,000 |
11 | 株式会社 コロワイド(7616) | 5,420 | ¥6,000,000 |
12 | 株式会社 サイゼリヤ(7581) | 4,164 | ¥5,893,000 |
13 | 株式会社 プレナス(9945) | 1,656 | ¥5,584,000 |
14 | 株式会社 王将フードサービス(9936) | 2,241 | ¥5,345,000 |
15 | 株式会社 JFLAホールディングス(3069) | 1,988 | ¥5,267,000 |
16 | カネ美食品 株式会社(2669) | 1,232 | ¥5,179,000 |
17 | 株式会社 ドトール・日レスホールディングス(3087) | 2,755 | ¥5,015,000 |
18 | ワタミ 株式会社(7522) | 2,642 | ¥4,660,000 |
19 | カッパ・クリエイト 株式会社(7421) | 816 | ¥4,583,000 |
20 | くら寿司 株式会社(2695) | 2,090 | ¥4,547,000 |
※Source:各社IR/WEB:調査日:2021年6月
年間平均給与には「賞与を含む」(法令上)
年間平均給与対象者は、従業員とされており役員は含まれない
従業員には、臨時従業員は含まず
従業員とは正社員(期間の定めのない労働契約(無期労働契約、正規雇用)の労働者)
臨時従業員とはいわゆる契約社員・パート社員・アルバイト社員等(有期労働契約(非正規雇用)の労働者)
あくまでも抜粋となりトップライン、ボトムラインには大きな幅がある。ここにあげた企業だけでもトップとボトムで約360万円の年収差異があるのは驚きである。
給与に反映してか、スシロー同様にトリドールなどは直近異業種から多くの有能な人材を積極採用している。
特に力を入れているのが「DX(IT分野への人材投資)」と「マーケティング分野の即戦力人材」採用にとなる。
彼らは報酬体系ももちろんだがそういった人材人種が好む立地環境や社屋への設備投資なども含めかなり徹底した動きを意識的にとっているのが伺える。
彼らに見られるように、そういった従来の飲食分野とは違う特殊領域に長けた即戦力を異業種から人を入れてでもコロナ禍の変化に適応していかなければならないのが外食産業が置かれた社会背景であり、その中で求められているのが急激な生産性向上の核戦略となる「DX」である。
つまり、年間平均給与800万超えを続けているスシローがここ数年こだわり惜しげもなく意思決定してきているのが急激なDXへの投資なのである。
スシローが目指すべきDXの今とミライとは?
スシローのDX戦略を端的にまとめたのが以下の図となるが、店内オペレーションのITシフトと同時に利益率の高い店外収益を極限まで引き上げることで営業時間短縮など外部環境下でも収益をあげ続ける仕組みに適応し、更に来店客の動向や購買データをリアルタイムで分析しデータマイニングすることで廃棄など無駄を極限まで抑える。つまり全てをつなげることで生まれる付加価値にこそ投資をしているのである。
また販売データはマーケティングに投下し効率の良いリピーター向け販促展開を強化。更に集客で得られたメールアドレスなど顧客データを自社アプリに集積されていく仕組みである。
参照:店舗運営者のためのDX推進オンラインカンファレンス 「Real Store Conference ~店舗の集客・顧客体験をアップデート ~」セミナー内容より一部抜粋
それらのDXの取り組みによって、トップラインを伸ばしながらも人的投資は最小で運用し、逆に味や品質に直結する必要な材料原価には投資を増やしながらも廃棄など無駄な原価は圧縮し利益率を維持向上させる。
つまり生産性を極限まで向上させる循環と仕組みがDXにより整備されていくのである。
GoogleMap対策も万全
また、スシローは吉野家や丸亀うどんなどと同様に検索エンジン対策にもマーケティング部署が最適化を図ることで消費者への認知向上における生産性を高めている。最近ではスマフォの普及率と連動し需要が高まっているGoogleMapへの対策を注力し行うことでモバイル端末からの情報検索に対するユーザー体験の向上を図っている。
俗に言うMEO対策(Googleビジネスプロフィールの管理対策)となるが、肝となるのは最適なパートナー選定を行いながら自社リソースで賄う部分、代理店やツールを活用する部分をうまく切り分け、効率的な運用を実現する部分にある。
最近ではMEO対策を支援する企業や代理店もタケノコのように増えてきており、それらの中からいかにして優良代理店を比較選定できるかも生産性向上のためには重要なファクターのようである。
そういった際にはその業界や目的に特化した以下のようなMEO対策企業の比較情報サイトなどを活用して情報を集めていくことも生産性向上施策の1つとなる。
参考サイト一例
まとめ
飲食業は他業種に比べ労働生産性が低い、つまり裏を返すと人的リソースの投下によって高い付加価値を産みやすい業種である一方で生産性が低く人的投資がしづらい≒人件費をあげづらい業界でもあると言えるかもしれない。
外食産業の年間平均給与が他業種に比べ低く設定されている傾向があるというのは生産性が低いことと比例していると思われ、一方で生産性を高めることができれば年間給与つまり人件費に投資できる金額もその分引き上げることができるといえる。
スシローの年間平均給与額がその証拠であり、どこに投資しどこを削減することが何に繋がりさらなる好循環を産むのかが明確に戦略によって表現されている。
人件費は低ければ低いほうが良いかといえば、そうではない。無機質なロボットが提供するサービスのみであれば別に飲食店に行く必要もなく、自宅やコンビニで十分なのである。
人と接する機会を作る、深め、接客品質をあげるために人に投資をすることで付加価値を産む領域でもある。
その投資を生み出すための生産性向上、業務改善やIT投資、DXであるべきであり、そこは人であるべきかというフラットな視点を持って経営改善や店舗内のオペレーション改善、DX推進に取り組んでいただきたい。
そうすることで結果的に社員の給与を引き上げ、異業種など特殊人材の採用などにもつながり、外食産業が次のステップを踏むきっかけになると思われる。
スシローの取り組みには、外食産業全体で今後も注目していくべきであると考える。